朝。
静かな港。
風は弱い。
潮も悪くない。
そして今日は。
エギ美は、一人でした。
「……。」
海を見る。
ラインを見る。
風を見る。
前みたいに、
ただ“投げるだけ”ではありませんでした。
初めて一人で来た日
「緊張する……。」
バッグを置く。
ロッドを組む。
エギを結ぶ。
前なら全部、
先生に聞いていました。
でも今日は。
「……たぶん大丈夫。」
少しだけ、
言葉に自信がありました。
1話の頃
「“しゃくる”って何?」
あの日。
海が怖かった。
専門用語も分からなかった。
着底も。
フォールも。
アタリも。
全部意味不明だった。
でも今は。
「今日は風そこまで強くない。」
- ラインを見る。
- 潮を見る。
- 常夜灯を見る。
- ベイトを見る。
ちゃんと海を見ていました。
先生からのメッセージ
スマホが震える。
『着いた?』
『今日はどう?』
少し間が空く。
そして。
『落ち着いた話し方で安心した』
エギ美
「……。」
ちょっと嬉しい。
自分で考える
ヒュッ
ポチャン
「着底。」
ビシッ ビシッ ビシッ
フォール。
ラインが少し流れる。
「潮、昨日より効いてる。」
前なら分からなかった事。
今は少しだけ分かる。
数投後。
反応なし。
移動するか。
粘るか。
考える。
「ベイト少ない。」
周囲を見る。
潮を見る。
少し歩く。
“釣りしてる感覚”
別のポイント。
潮がかなり当たる。
ベイトも多い。
「ここかな。」
前みたいな
“なんとなく”
ではありませんでした。
理由がある。
少しだけ。
ちゃんと。
ヒュッ
ポチャン
着底。
しゃくる。
待つ。
フォール。
フッ
「……!」
違和感。
バシッ!!
ズシッ
ジーーーッ
「来たっ!!」
一人で掛けた1杯
前みたいにパニックにはならない。
ロッドを立てすぎない。
テンションを抜かない。
ゆっくり。
ゆっくり。
波打ち際。
白いジェット。
小さなアオリイカ。
「……釣れた。」
誰も隣にいない。
でも。
ちゃんと釣れた。
自分で見つけて。
自分で考えて。
自分で掛けた。
「……。」
少し笑う。
スマホを開く。
『なに?』
既読。
少しして。
『釣れると思ってた』
「……。」
なんか悔しい。
でも。
ちょっと嬉しい。
最初はみんな分からない
海を見る。
朝日。
潮の匂い。
ライン。
風。
エギ。
全部、
前より少しだけ分かる。
エギ子先生の最後の補足メモ
エギングは、
- 着底
- しゃくり
- フォール
- アタリ
- 風
- 回遊
など、覚える事が多く見えます。
でも最初から全部できる人はいません。
少しずつ、
「今の何だった?」
↓
「こういう事か」
を繰り返していく釣りです。
最初は分からなくて普通。
でも、
海に立ち続けると、
少しずつ見える景色が変わっていきます。
「うん?」
「……いい事言うじゃない。」
「でも。」
「その話し方してる時、大体次のエギ無くすのよね。」
「最後までそれですか!?」
完
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